2012年02月09日

ファンドレイジング・日本2012に参加しました!

キラキラファンドレイジング・日本2012キラキラ

2月4日(土)、東部パレットからも、スタッフが「ファンドレイジング・日本2012」に参加してきました。
昨年は寄付元年と呼ばれた一年でしたが、実際のところ、
地域で活動する福祉や教育・環境等々のNPOにとって、そういった実感はおそらく少ないでしょう。


もちろん、全国の伊達直人の活動は賞賛されるべきものですし、また震災以降を振り返れば、
キラキラ約80%の人々が寄付を行なっており(これも今回のイベントで知りました)、
日本においても実は寄付への習慣が欧米とはまた違ったかたちで存在していることを、
いまいちど確認できた一年だったと思います。


他方で、すでに多くの支援者を得て活動している組織もありますが、
被災地への寄付活動が広がった一方で、従来から寄付によって活動していた
NGOへの寄付が減少したというニュースもあります。
参考:アフガン診療所縮小も 静岡拠点「カレーズの会」
↑↑↑上昇中もし可能であれば、ご寄附の検討をお願いします。↑↑↑


もちろん被災地への支援は疑う余地なく重要です。
しかしあえて、地域で規模を問わずさまざまな団体の支援をさせていただいている身から見ると、
いま寄付と聞いて人々がイメージするものと、私達が応援している団体のあいだには、
大きな隔たりがあると強く思います。


マーケティングの問題、あるいは人口の問題など要因をあげればキリがありません。
でも、私たちが地域に抱えている問題は、いまはまだ目に見えないだけで驚くほど多いはずです。


山林の荒廃が進めば、シカやイノシシは今後さらに市街地へ餌を求めるでしょうし、
土砂災害の危険性も増していきます。
しかしながら、間伐など森林保全を行うNPOはほとんど手弁当で活動しているのが現状です。

また国際協力活動はもとより、私たちの住む街に目を向ければ、
日本に暮らす外国の子どもたちの多くが、学校に通えず満足な水準の教育を受けられていません。
私たちのすぐそばには貧困があります。
多文化共生にとりくむ団体は国内に多くありますが、そのほとんどは行政からの支援に頼っており、
構造不況の中で活動の継続に不安を抱えている状況です。


彼らの活動を、いったいどうすれば持続的にサポートできるのか、現状を見ればその途方のなさに眩暈がするほどです。


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……と、深刻に語ってしまいましたが、今回のイベントにはなななんと、700人もの参加者が集いました!!ok
おそらくそれぞれに分野は違えど、こうした問題意識を共有できた空間だったのではないかと思います。


受付を済ますと、すでにメイン会場は人でいっぱい。
ロビーに用意された中継モニターを前に、開会のセレモニーを大勢の人が見守っていました。


プログラム間の移動では通路が多くの人でにぎわい、熱気を感じます。
セッション会場はどこも満員で、見たいプログラムははやめに席を押さえないといけない状況に顔02まるでテーマパークのようです顔02

ファンドレイジング・日本2012に参加しました!

印象的だったのは、どのセッションも質問がやまないことでした。
なにかが始まるときに必要な楽観主義のようなものが会場全体にあって、
寄付、そしてNPOの拡がりを確信させてくれるような空間でした。


高知県で冠婚葬祭寄付を今年度からはじめたNPO法人高知市民会議の畠中さんも、前回のファンドレイジング・日本に参加した一人。今年は登壇者となって、先進事例について興味深い紹介を行いました。その活動が本格的にはじまったのも、このイベントへの参加がきっかけだったようです。


アメリカやイギリスでは行政サービスの縮小と既存団体への補助金のカットが、寄付の増加を生んだといいます。
日本ではどのような戦略がとられるのかわかりませんが、参考までにいくつかのセッションの報告をしたいと思います。


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「パブリックスピーキングの可能性をもっと理解する」蔭山洋介(スピーチライター)

ファンドレイジング・日本2012に参加しました!

演出家でもある蔭山氏が、プレゼンやスピーチのノウハウを展開。
舞台の演出の方法論をスピーチに適用する――というよりも、もはやあらゆるプレゼンやスピーチがネットで中継され、不特定多数から視聴され、プレゼンテーション・ソフトの操作性は向上し、どんな小さな会場でも音響・証明の設備が充実している現代において、プレゼン・スピーチは演劇との区別のない状況に置かれているという認識がおそらく氏の伝えたかったことではないかなと思いました。
機材トラブルで予定していたシナリオが使えない中、プレゼンですぐに使えるノウハウとして、照明、小道具、大道具、衣装など多岐にわたる話を、聴衆も巻き込み飽きさせず語る技術に深く感じ入るところがありました。
氏の著作は参考になるところが多そうで、まだ読んでいないので皆さんにオススメはできませんが(笑)、近く読んでみたいと思いました。


「利他的行動論」坂本文武(立教大学准教授)
坂本教授による、「利他的行動」に関する学際的な講義。
まずはアダム・スミスをひき、諸個人の利己的行動が結果として社会的利益を最大化するという古典的な経済学への基礎づけから、個人の持つ自己愛が社会に利益をもたらさないわけではないことを説明。つぎに感情科学へ飛び、「利他心」のようなものは科学においては見ることができないが、「利他的行動」は進化の中で獲得した形質として説明できることが示されます。


そしてNPOにとって馴染みのある「市民」や「公共性」などの社会学・政治哲学的な用語の整理から、再び経済学の話へ。
いまマジックワードと化している感もある「行動経済学」は、古典的経済学が前提としていた経済合理性のもとに行動する個人(ホモ・エコノミクス)を否定し、人間を非合理な意思決定を行う主体として想定する。公共財ゲームと呼ばれるゲームでは、プレイヤーが協力して仕事をすれば大きな利得が得られるが、フリーライダー(なまけ者)の存在によって、やがてゲームは非協力的な均衡に落ち着きます。
「市民社会」「公共性」あるいは「寄付」といったときに必ず問題になるのがフリーライダーです。
これは行動経済学が示す一方の側面ですが、他方で、人々の不合理な行動を寄付に結び付けることもできるのではないかな、と僕は思っています。


たとえば、「双曲割引」という用語があります。
簡単に言えば、人は将来の大きな利益よりも、目先の小さな利益を優先してしまうというものです。縦軸に割引率をとり、横軸に時間をとると、人々の意思決定が双曲線のグラフになることから名づけられました。
例をあげると、「いま20ドルもらえるのと、一か月後に23ドルをもらえるの」どちらを選ぶかと言ったときと、「2週間後に20ドルもらえるのと、一か月後に23ドルもらえる」ののどちらがいいかと言われた時、前者の方が大脳の報酬系が活性化します。そこで20ドルを選んでしまう人も多いかもしれませんが、実際にはどちらのケースでも23ドルを待つことに経済合理性があることは明白です。
このように人は目先の利益を目の前にすると、非合理な意思決定をしてしまいがちです。


これが寄付や公共性とどんな関係があるのか?
寄付や公共性といったものを、利他的な行動としてのみとらえた場合、行動経済学は有効な手法を示しません。
しかしむしろ、寄付という行為を利己的な行動として、本人はまったく社会貢献のことなど気にしていないにもかかわらず、目先の利益によってとった行動が結果的に寄付、ひいては公共へと繋がっていく――そんな寄附の仕組みの構想はできないかな、とこの講義を聞いて私個人は思いました。


長くなってしまいましたが、多くのヒントと熱意を得られるイベント、ぜひ皆さん、来年度の開催を期待しましょう!



Posted by 東部パレットスタッフ at 16:10│Comments(0)講座・イベントの案内&報告
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